#1 つながってる場所
最近、ふとした瞬間に思い出すことがある。
もう会えないはずの、あの子たちのこと。
一緒に過ごした時間や、何気ない日常の中にあったぬくもり。
寂しい、という気持ちもある。
でも、それだけではない。
「ちゃんと、どこかでつながっているんじゃないかな」
そんなふうに思う瞬間がある。
今、私のそばにはもこがいる。
元気で、マイペースで、少し気まぐれ。
けれど時々、不思議なくらい落ち着いた表情を見せることがある。
まるで、何かを感じ取っているみたいに。
そんなある日の夜。
静かな部屋の中で、もこがいつもの場所に顔を入れていた。
机の奥。
コードが少し絡まっているところ。
くん、くん、と確かめるように匂いを嗅いでいる。
そこには何もない。
それなのに、なぜか気になった。
見えないけれど、
たしかに何かがいるような気がした。
そのとき。
ふわりと空気がやわらぐ。
やさしくて、どこか懐かしい気配。
思わず立ち止まる。
もちろん、何かが見えたわけではない。
声が聞こえたわけでもない。
それでも、不思議と心が落ち着いた。
もこは耳をぴくりと動かし、その場に座り込む。
知らないはずなのに、
安心しているようにも見えた。
私は少し離れたところから、その様子を眺めていた。
理由は分からない。
でも、なんとなく思う。
ここには、何かが残っている。
一緒に過ごした時間。
たくさんの思い出。
言葉にはできないぬくもり。
そういうものが、静かに積み重なっている気がした。
もこは小さく「にゃ」と鳴く。
それから、くるりと丸くなって眠り始めた。
安心したように。
深く、静かに。
その寝顔を見ながら、私はそっとつぶやく。
「……そっか」
見えないだけで、
なくなったわけじゃない。
一緒に過ごした時間も、
もらったぬくもりも、
今もどこかにつながっている。
そんな気がした。
あの子たちの名前を、心の中でそっと呼んでみる。
返事は聞こえない。
けれど、不思議と寂しくはなかった。
見えないだけで、
きっと、どこかでつながっている。
そう思えた夜だった。
